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公認会計士 論文式試験の選択問題(統計学)を解く ~その1~

2017/12/04

カテゴリ:

概要

この記事は、平成28年公認会計士論文試験の統計学分野の選択問題(第8問)を解いたものです。 統計学の時間で一通り勉強すれば、第8問はすべて解けるようになります。

記事一覧

  1. 第8問 問題1(本記事)
  2. 第8問 問題2

  3. 第8問 問題3

目次

問題1

■問1:ア

正規分布を用いた信頼区間の推定に関する問題です。

問題文より、器具Aの寿命は次のような分布であることがわかります。

X \sim N(10,{3.6}^2)のもとで、P(X \leq 1)を計算します。これは、次の図の青色で表される部分の面積です。

寿命が正規分布に従うことから、正規分布表を用いて計算することができます。最初に、Xを標準化します。

 \displaystyle \frac{X-\mu}{\sigma}=\frac{1-10}{3.6} = -2.5

標準正規分布表より、求める確率は\Phi (-2.5)=0.0062です。

しかしながら、この解法はあまり正確ではない可能性が考えられます。 なぜなら、X < 0の部分も考慮してしまっているからです。

より正確な数値を計算するなら、X \geq 0における条件付き分布を次のように定めます。

 \displaystyle f(X|X \geq 0) = \frac{1}{\displaystyle \int_{-\infty}^{0}f(t)dt}f(X)

正規分布の場合には、これを特に切断正規分布と言います。

この分布について、P(0\leq X \leq 1)を計算すれば正しい確率が計算できます。 条件付き分布から計算した答えは次のようになります。

 \displaystyle  P(0\leq X \leq 1)=\frac{0.0062-0.0027}{0.0027}=0.0035

ただし、実際の試験ではここまで正確に求める必要はないと考えられます。

■問1:イ

次のように算術平均\bar{x}を計算します。

 \displaystyle \bar{x}= \frac{1}{6} \left( 12.5+11.5+13.2+9.5+12.0+8.5 \right)=11.2

■問1:ウ

不偏分散は、次のように計算します。分母は「サンプルサイズ-1」となることに注意してください。

     \begin{eqnarray*} \begin{split} \displaystyle \nu^2 &= \frac{1}{6-1} \left( (12.5-11.2)^2 + (11.5-11.2)^2 + (13.2-11.2)^2 \\ &\quad  + (9.5-11.2)^2 + (12.0-11.2)^2 + (8.5-11.2)^2 \right) \\ &= \frac{16.6}{5} \\  &= 3.32 \end{split} \end{eqnarray*}

■問1:エ、オ

母分散が未知の場合における母平均の95%信頼区間は次の式で計算できます。

 \displaystyle \bar{x} + t_{(0.025,n-1)}\sqrt{\frac{\nu^2}{n}} \leq \mu \leq \bar{x} + t_{(0.975,n-1)}\sqrt{\frac{\nu^2}{n}}

t_{(a,b)}は自由度bのt分布の下側aパーセント点を表します。 t_{(0.025,5)}t_{(0.975,5)}は、t分布表よりそれぞれ-2.571、2.571です。 数値を読み取る際は、数値表の定義をよく参照してください。

イ、ウの結果を代入すると、次のようになります。

  \displaystyle 11.2 -2.571\sqrt{\frac{3.32}{6}} \leq \mu \leq 11.2 + 2.571\sqrt{\frac{3.32}{6}} \\  \iff 11.2 -1.912 \leq \mu \leq 11.2 + 1.912 \\  \iff 9.29 \leq \mu \leq 13.11 \\

以上より、エは9.29で、オは13.11です。

■問1:カ、キ

母分散の95%信頼区間は、次の式で計算できます。

 \displaystyle \chi^2_{(0.025,n-1)} \leq \frac{(n-1)\nu^2}{\sigma^2} \leq \chi^2_{(0.975,n-1)}

ウの結果を代入すると、次のようになります。 \chi^2_{(a,b)}は自由度bのカイ二乗分布の下側aパーセント点を表します。 \chi_{(0.025,5)}\chi^2_{(0.975,5)}は、カイ二乗分布表よりそれぞれ0.83、12.83です。 数値を読み取る際は、数値表の定義をよく参照してください。

  \displaystyle \chi^2_{(0.025,n-1)} \leq \frac{(n-1)\nu^2}{\sigma^2} \leq \chi^2_{(0.975,n-1)} \\  \iff \displaystyle 0.83 \leq \frac{16.6}{\sigma^2} \leq 12.83 \\  \iff \displaystyle \frac{16.6}{12.83} \leq \sigma^2 \leq \frac{16.6}{0.83} \\  \iff 1.29 \leq \sigma^2 \leq 20

以上より、カは1.29で、キは20です。

問2

比率の信頼区間に関する問題です。問題文より、次の式が成立するような最小のnを求めればよいことが分かります。

|比率の95%信頼区間の最大値-比率の真値|≦0.03

比率の信頼区間の最大値は、次の式で計算することができます。

 \displaystyle p + 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}}

問題文から、比率の真値pは0.5として計算します。 これを問題文の式に代入すると、次のようになります。

  \displaystyle \left| p + 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} -p \right| \leq 0.03  \iff \displaystyle 1.96 \sqrt{\frac{p(1-p)}{n}} \leq 0.03  \iff \displaystyle \sqrt{n} \geq \frac{9604}{9} \simeq 1067.1

よって、nは1067.1より大きい最小の整数であることが分かります。答えは1068です。

統計学の時間で勉強しよう

今回の問題は、「統計学の時間」の記事で勉強できます。それぞれの問題について、関連する単元をリストアップしています。


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