公認会計士 論文式試験の選択問題(統計学)を解く ~その2~
2017/12/05
カテゴリ:公認会計士(統計学)
概要
この記事は、平成28年公認会計士論文試験の統計学分野の選択問題(第8問)の問題2を解いたものです。 統計学の時間で一通り勉強すれば、第8問はすべて解けるようになります。
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目次
問題2
■問1:ア
一元配置分散分析における帰無仮説は「効果はない()」です。 対立仮説は「効果がある()」です。 これは、「、、、の中に少なくともひとつ0ではないものがある」ことを意味します。
■問2
分散分析における誤差項は、重回帰分析と同じ仮定「平均0で分散が等しく、互いに独立な正規分布に従う」を満たす必要があります。
■問2:イ
誤差項は等分散、つまり分散が一定です。
■問2:ウ
誤差項は正規分布に従います。
■問2:エ
誤差項に相関はありません、つまり独立です。
■問3
因子「休憩時間」の平方和と誤差の平方和を計算します。 この際、平方和の分解より「」が成立することを考慮すると、かのどちらか一方を計算すればよいことが分かります。今回は、因子「休憩時間」の平方和を計算します。
一元配置分散分析における因子の平方和は、次の手順で計算できます。
- ステップ1:すべての群を併合した平均値を計算する
- ステップ2:各群ごとの平均値を計算する
- ステップ3:各群ごとの群平均と全体平均を用いて平方和を計算する
- ステップ4:各群ごとの平方和の総和を計算する
では、それぞれの手順を具体的に追っていきましょう。
ステップ1
データ全体の算術平均値を計算します。
ステップ2
各群ごとの算術平均値を計算します。
ステップ3
各群ごとに、を計算します。ここで、は各群のサンプルサイズを表します。今回は全てのiについてです。
ステップ4
全てのを合計します。これが求めるになります。
また、は次のように計算できます。
■問4
帰無仮説を検定します。検定には、因子と誤差の平均平方、を使用し、次のように検定統計量を構成します。平均平方は、平方和を対応する自由度で割ったものです。
の値を求めましょう。 因子の自由度は、「因子の水準数-1」で計算できます。この問題では水準数は4であるため、です。
誤差の自由度ですが、自由度も平方和と同様に分解することができ、「」の関係が成立します。
は、「全体のサンプルサイズ-1」で計算できます。つまり。です。 以上のことから、と求められます。
検定統計量は、、、、を用いて次のように求められます。
は帰無仮説のもとでF分布に従うため、F検定を行います。 F分布表から、自由度(3,16)の上側5パーセント点の値を参照すればいいのですが、(3,16)の点は表に載っていません。このような場合、二通りの考え方で解くことができます。
- ■分布の性質を使用して解く方法
- ■自由度を補完する方法
パーセント点を固定した場合、は自由度が増加すると単調に減少するため、 の大小関係が成立します。つまり、がより大きくなることはありません。
これは、仮の棄却域として帰無仮説に対し保守的な値を使用し検定が有意となれば、正しい棄却域を使用しても有意になることを意味します。
また、検定統計量は10を超えており、であることも考慮すると、有意水準5%のもとでは確実に有意であると考えられます。以上より、有意水準5%で帰無仮説は棄却されます。
分布表にない自由度でも、補完して近似値を求めることができます。調和補完による計算方法を紹介します。
2点A,Bについて、この2点をに内分する点Cを計算します。
今回は第2自由度15と20について、、、と定めます。つまり次のような式でを計算します。
ここで、tは次の式で計算します。
今回はに第2自由度を使用します。実際に計算すると次のようになります。
tの値が求められたので、を計算しましょう。
補完の結果、と求められました。実際の数値はであるので、精度よく補完できていることがわかります。 この値を棄却域と定め検定統計量と比較すればよいのですが、となるため、有意となることがわかります。
統計学の時間で勉強しよう
今回の問題は、「統計学の時間」の記事で勉強できます。それぞれの問題について、関連する単元をリストアップしています。