クロンバックのアルファ─エクセル統計による解析事例
2017/04/19
カテゴリ:解析事例
※ このコンテンツは「エクセル統計(BellCurve for Excel)」を用いた解析事例です。
概要
個人のある心理的傾向を測定する場合、心理的傾向を反映していると思われる複数の質問項目を用意し、それら複数の質問へのあてはまりの程度を得点として算出する方法をよく用います。この質問の群のことを心理尺度といいます。心理尺度には、信頼性と妥当性が必要とされます。信頼性は、測定結果の安定性や一貫性、正確さを意味します。妥当性は、測りたいことが測れているのかということを表します。
クロンバックのアルファは、信頼性の指標となる信頼性係数の1種で、単にアルファ係数と言われることもあります。アルファ係数は、心理尺度に使われた項目の回答にどの程度一貫性があるかを示します。通常、アルファ係数が0.8以上であれば一貫性があると見なされます。
出力内容の「各変数を削除した場合の評価」のところに「クロンバックのアルファ」が出力されます。これは、その変数(質問項目)を除いて再計算したアルファ係数の値です。質問項目の数を減らす場合、削除した場合のアルファ係数が最も高い質問項目を削除します。
分析データ
下図のデータは、自己肯定意識についての12の質問に対する200人の回答結果です。これらの質問が自己肯定意識のどのような側面をあらわしたものか、エクセル統計を用いて因子分析を行った結果、5番から8番の質問が「充実感」の因子を反映しているものではないかという結論が得られました。この5番から8番の質問に9番の質問も加えてクロンバックのアルファを計算したらどういう結果になるかを調べます。
エクセル統計を用いた因子分析の解析事例はこちら → 因子分析─エクセル統計による解析事例
※ このデータは、実際のアンケートの結果ではなく架空のデータです。「自己肯定意識尺度(平石賢二、1990)」を参考に項目を構成しました。
12の質問の詳細は以下の通りです。
- 01.自分の夢を叶えようと意欲に燃えている
- 02.前向きの姿勢で物事に取り組んでいる
- 03.自分の良い面を一生懸命伸ばそうとしている
- 04.自分には目標というものがない
- 05.生活がすごく楽しいと感じる
- 06.充実感がある
- 07.自分の好きなことがやれていると思える
- 08.自分はのびのびと生きていると感じる
- 09.他人との間に壁を作っている
- 10.人間関係を煩わしいと感じる
- 11.私は人を信用してない
- 12.他人に対して好意的になれない
ダイアログの設定
セル範囲「G3:K3」を選択後、メニューより[エクセル統計]→[多変量解析]→[クロンバックのアルファ]を選択します。
表全体のセル範囲「G3:K203」が自動で[データ入力範囲]に指定され、変数ラベルが[分析に用いる変数]に設定された状態でダイアログが表示されます。このまま[OK]ボタンをクリックします。
出力内容
出力内容の目次がハイパーリンク付きで出力されます。
ケースの要約
欠損のないケースを表す「有効ケース」、欠損のあるケースを表す「不明ケース」、「全体」のそれぞれの件数と割合が出力されます。「不明ケース」を除いた「有効ケース」が分析対象となります。このデータには「不明ケース」はありませんでした。
基本統計量
各変数と合計値のサンプルサイズ、平均、不偏分散、標準偏差、最小値、最大値が出力されます。
相関行列
各変数間の相関係数が行列形式で出力されます。
線形結合している変数
変数間で線形結合している変数がある場合、その変数を除いて分析が行われます。このデータには線形結合している変数はありませんでした。
クロンバックのアルファ
クロンバックのアルファの値は0.6792と0.8を割り込んでいます。したがって、5番から9番までの5つの質問では「充実感」を測る質問としては整合性がとれていません。
各変数を削除した場合の評価
9番の質問のところに出力されているクロンバックのアルファだけが0.8285と0.8を超えています。これは、9番の質問を除いた5番から8番までの4つの質問でクロンバックのアルファを計算すると、この値になるということです。したがって、「充実感」を測る質問としてはこの4問を使えばよいということになります。
※ 掲載している画像は、エクセル統計による出力後に一部書式設定を行ったものです。
ダウンロード
この解析事例のExcel ファイルのダウンロードはこちらから → example_24.xlsx
このファイルは、エクセル統計の体験版に対応しています。
参考書籍
- 堀 洋道, 吉田 富二雄, "心理測定尺度集〈2〉―人間と社会のつながりをとらえる<対人関係・価値観>", サイエンス社, 2001.
- 村上 宣寛, "心理尺度のつくり方", 北大路書房, 2006.
- 繁桝 算男, 森 敏昭, 柳井 晴夫, "Q&Aで知る統計データ解析―DOs and DON'Ts", サイエンス社, 2008.
- 松尾 太加志, 中村 知靖, "誰も教えてくれなかった因子分析―数式が絶対に出てこない因子分析入門", 北大路書房, 2002.