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サッカーW杯のグループリーグ突破とFIFAランキングとの関係

2018/04/13

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サッカーの2018 FIFA ワールドカップ(以下、W杯とします)が6月にロシアで開幕します。W杯には、各大陸予選や大陸間プレーオフを勝ち抜いた32ヶ国が出場します。日本もこのロシアW杯に出場します。日本は、1998年フランス大会から6大会連続6回目の出場です。

W杯では、まず4チームずつ8グループに分かれて各グループで総当たり戦を行います。そして、グループ内で上位2位以内に入ったチームが決勝トーナメントに進みます。

日本は、過去5大会のうち、2度グループリーグを突破しました。今度のロシアW杯では、日本は、ポーランド、コロンビア、セネガルと同じグループに入っています。

このグループ分けは、2017年10月16日時点での「FIFAランキング」に基づいて行われました。FIFAランキングとは、国際サッカー連盟(FIFA)により発表されるランキングで、各国や地域の強さの指標になります。

日本が入っているグループの各国のFIFAランキングは、日本が55位、ポーランドが7位、コロンビアが13位、セネガルが22位です。これだけ見ると、決勝トーナメントに進めるのはポーランドとコロンビアで、日本はちょっと厳しそうに見えます。実際、FIFAランキングは決勝トーナメントに進むチームの予想によく用いられます。

では、過去のW杯において、本当にFIFAランキングはグループリーグ突破の参考になったのでしょうか。日本が出場した過去5大会のデータを元に検証してみました。

過去5大会分のデータ

まず、グループ分けに用いられたFIFAランキングと、グループリーグでの結果順位を過去5大会分用意しました。

1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング
【1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング】
1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング
【2002年日韓大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング】
1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング
【2006年ドイツ大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング】
1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング
【2010年南アフリカ大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング】
1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング
【2014年ブラジル大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング】

箱ひげ図を作成するためのデータ

このデータから箱ひげ図を作成して、FIFAランキングとグループリーグでの結果の関係性を見てみます。Excel 2016には箱ひげ図を作成する機能が搭載されています。Excel 2016で箱ひげ図を作成する場合、1列目に分類項目、2列目に数値を並べたデータが必要です。今回のデータであれば、1列目にグループ順位、2列目にFIFAランキングを並べたデータを用意します。

1998年フランス大会 グループリーグの結果順位とFIFAランキング
【箱ひげ図作成用データ 5大会分のグループリーグ結果順位とFIFAランキング】

Excel 2016を用いて箱ひげ図を作成する

セル範囲 A1:B161 を選択し、Excelのリボンから[挿入]タブ→[統計グラフ]→[箱ひげ図]を選択します。グラフタイトル、横軸のラベル、データラベルの設定などを行うと、次のようになります。

グループリーグの結果順位ごとのFIFAランキングの箱ひげ図

ロシアW杯の組分け抽選において、日本のFIFAランキングは55位でした。日本のFIFAランキングを念頭に置きながらこの箱ひげ図を見てみると、グループで1位・2位になったチームのうち55位より下位だったチームが2つあります。1998年フランス大会のナイジェリア(71位)と2002年日韓大会のセネガル(67位)です。ナイジェリアは、パラグアイ、スペイン、ブルガリアと同組になり、1位でグループリーグを突破しました。セネガルは、デンマーク、ウルグアイ、フランスと同組になり、2位でグループリーグを突破しました。

箱ひげ図全体を見ると、グループリーグの順位が下がるほど、箱の位置が上がっていくのが見て取れます。また、FIFAランキングが1位であってもグループリーグで3位や4位になり得ることも見て取れます。

グループ内でFIFAランキングが最下位のチームの結果は?

先ほどの箱ひげ図の場合、すべてのデータをひとまとめにしているので、各グループ内での相対関係が考慮されていません。

ロシアW杯では、日本はグループ内でFIFAランキングが最も低く、この点だけ見れば日本のグループリーグ突破は難しく見えます。そこで、グループ内でFIFAランキングの最も低いチームが、グループリーグで何位になったのか、過去5大会のデータで調べてみました。

グループ順位チーム数割合
1位410.0%
2位820.0%
3位1025.0%
4位1845.0%

この表を見ると、グループ内でFIFAランキングが最下位のチームのうち、10%が1位で、20%が2位でグループリーグを突破しました。つまり、30%のチームがグループリーグを突破しました。

FIFAランキングについての注意点

FIFAランキングは、これまでに2度、計算方法が改訂されました。1993年から1998年12月まで、1999年から2006年5月まで、2006年7月12日から現在までのそれぞれで計算方法が異なります。

この記事では、1998年フランス大会、2002年日韓大会と2006年ドイツ大会、2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会と2018年ロシア大会、の3つの期間で計算方法が異なります。これらの3種類のFIFAランキングをひとまとめにしてこの記事を作成していることにご注意ください。

なお、現在の計算方法では、ランキング上位であるヨーロッパ諸国や南米諸国との対戦が少ないアジア諸国がランキングを上げることは難しいとされています。

ロシアW杯で日本がグループリーグを突破する見通しは?

過去のW杯でFIFAランキング55位より下位のチームがグループリーグを突破したことは2度あります。しかし、1998年フランス大会のナイジェリア(71位)と2002年日韓大会のセネガル(67位)は、いずれも現在の計算方法とは異なるFIFAランキングの順位です。(しかも、いずれもアフリカ勢である...!)

そこで、ロシアW杯と同じ計算方法のFIFAランキングが使われた2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会に絞って、グループ1位・2位になったチームのFIFAランキングを見てみます。2010年南アフリカ大会では、韓国(48位)、日本(40位)、ガーナ(38位)がグループリーグを突破しました。2014年ブラジル大会では、ナイジェリア(33位)、アルジェリア(32位)、コスタリカ(31位)がグループリーグを突破しました。この2大会において、50位より下位のチームはグループリーグを突破しませんでした。

一方、グループ内でFIFAランキングが最下位であっても、そのうちの30%のチームがグループリーグを突破しました。直近の2大会に絞ったとしても、その割合は25%です。つまり、グループ内でFIFAランキングが最下位のチームが、必ずしも3位・4位になるとは限りません。

総合すると、日本のFIFAランキング55位にだけ注目すると、グループリーグ突破は厳しいと言わざるを得ませんが、グループ内でFIFAランキングが最下位の日本がグループリーグを突破できる可能性は20~30%程度ありそうです。


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