因子分析 : Factor Analysis
概要
因子分析とは複数変数の変数相互の関係から、潜在的なファクター(因子)を求める手法です。因子には「共通因子」と「独自因子」があり、共通因子は複数の変数に影響を与える因子を、独自因子は1つの変数にのみ独立に影響を与える因子を指します。共通因子と独自因子は無相関であり、異なる2つの変数に対する独自因子も無相関であるという仮定のもとにモデルを推定します。
主成分分析との違いは、主成分分析は変数を合成することを目的とし、因子分析は変数を分解する事を目的としていることです。
性格テストを例にとると、第1因子として内向・外向、第2因子として協調・独立を示す因子が得られたとします。次に各因子についてテスト項目毎の因子負荷量を見ることで、それぞれの項目がどの性格と密接な関係があるのか推定することが出来ます。さらに各個人がどういう性格傾向を持っているのかも因子得点から判断出来ます。
回転の方法
各回転法で規準化を行うか否かの指定が可能です。
- 直交回転 バリマックス法
- 直交回転 バイコーティマックス法
- 直交回転 コーティマックス法
- 斜交回転 コバリミン法
- 斜交回転 バイコーティミン法
- 斜交回転 コーティミン法
- 斜交回転 プロマックス法(指数kの指定が可能)
分析例ファイルのダウンロード
因子分析を使用する際のデータの形式やダイアログの指定方法、出力結果などを以下のExcelファイルからご確認いただけます。ダウンロードしてご参照ください。この分析例ファイルは、製品をご購入された場合にも自動でインストールされます。
なお、エクセル統計の無料体験版では、分析例ファイルのデータを実際に分析してみることができます。
処理対象データ
データベース形式
データサイズ範囲 | 処理対象データ | ||||
---|---|---|---|---|---|
行数 | 列数 | 数値 | 文字列 | 空白 | |
データラベル※1 | 3~60,000行 | 1列 | ○ | ○ | ○ |
分析に用いる変数 | 3~60,000行 | 2~100列※2 | ○ | 欠 | 欠 |
※:○…処理可、×…処理不可、欠…欠損値として除く
※1:データラベルは未入力でも処理可
※2:分析に用いる変数が2つ以上あること
設定項目
Excelの[エクセル統計]タブから、[多変量解析]→[因子分析]を選択すると以下のダイアログが表示されます。
「変数」タブ
- データ入力範囲 必須
- データ入力範囲の変更を行う場合、[変更]ボタンを選択します。データ入力範囲のダイアログが表示されるので、データ入力範囲を設定して [戻る] ボタンを選択します。なお、データ入力範囲の先頭行は変数名となります。
- データラベル
- [変数リスト]からデータラベルの変数を設定します。
- 分析に用いる変数 必須
- [変数リスト]から分析に用いる変数を設定します。
「オプション」タブ
- 線形結合している変数を除いて分析する
- 線形結合している変数を最初に除いてから分析する場合、このチェックボックスをオンにします。初期設定はオンです。
- 共通性の初期値 必須
- 共通性の初期値として [すべて1]、[相関係数の最大値]、[SMC]、[SMC (Joreskog の方法)]のいずれかを選択します。初期設定は [SMC]です。
- 因子の推定方法 必須
- 因子の推定方法として[主成分分析]、[主因子法]、[最尤法]のいずれかを選択します。初期設定は[最尤法]です。[最尤法]を用いる場合は、共通性の初期値を [すべて1]とすることはできません。
- 反復回数の上限
- 因子の推定回数の上限を入力します。上限までに因子の推定が収束した場合は、反復推定は終了します。初期設定は50回です。
- 抽出する因子の数 必須
- 抽出する因子の数として [相関行列の固有値のうち1より大きいものの数] と [指定] のいずれかを選択します。 [指定] を選択した場合、テキストボックスに「因子の数」を設定します。 データ内容によっては指定した数の因子を得られないこともあります。
- 因子得点を出力する
- 因子得点を出力する場合、このチェックボックスをオンにします。初期設定はオフです。
「因子の回転」タブ
- 因子の回転 必須
- 因子の回転の方法として [回転を行わない]、[直交回転バリマックス法]、[直交回転バイコーディマックス法]、[直交回転 コーティマックス法]、[斜交回転コバリミン法]、[斜交回転 バイコーティミン法]、[斜交回転 コーティミン法]、[斜交回転 プロマックス法]のいずれかを選択します。 [斜交回転 プロマックス法] を指定した場合、テキストボックスに[指数k] の値を設定します。
- 規準化を行う
- [規準化を行う] をオンにすると、回転の結果が共通性の高い変数によって受ける影響を補正します。初期設定はオンです。
出力内容
ケースの要約 | 有効ケース、不明ケース、全体の「サンプルサイズ」と「割合」 |
---|---|
基本統計量 | 各変数の「サンプルサイズ」、「平均」、「不偏分散」、「標準偏差」、「最小値」、「最大値」 |
相関行列 | 変数間の相関係数の行列 |
線形結合している変数 | 変数間で線形結合している変数のリスト |
設定内容 | ダイアログの設定内容や分析の結果として、「共通性の初期値」、「因子の推定方法」、「因子の数」、「反復回数の上限」、「反復回数」、「反復推定」、「因子の回転※1」を出力します。 |
適合度の検定※2 | 帰無仮説:「因子数fの因子分析モデルがデータに適合している」についてカイ二乗検定を行った結果を出力します。 |
共通性 | 各変数の「初期値」と「推定値」 |
固有値表 | 「初期値」、「抽出後」、直交回転を行った場合は「回転後」の各「固有値」、「寄与率」、「累積寄与率」が出力されます。斜交回転を行った場合は「因子構造の平方和」が出力されます。 |
【グラフ】固有値スクリープロット | 固有値の初期値を降順で線でつないだ折れ線グラフ |
※1:直交回転、斜交回転を行った場合に出力します。
※2:ダイアログで「因子の推定方法」を[最尤法]とした場合に出力します。
回転を行わなかった場合
因子負荷量行列 | 各因子の各変数への因子負荷量の行列 |
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グラフ用データ | グラフ作成用のデータ |
【グラフ】因子負荷量 | 各各変数に対する因子負荷量を横棒で表したグラフ |
【グラフ】因子1×因子2 | 因子1の因子負荷量を横軸に、因子2の因子負荷量を縦軸にとり変数をプロットしたラベル付き散布図。因子が2つ以上ある場合にのみ出力されます。 |
因子得点係数行列 | 各因子の得点の各変数へ得点係数の行列 |
因子得点※3 | 各因子の各ケースの因子得点 |
※3:ダイアログで「因子の推定方法」を[最尤法]とした場合に出力します。
直交回転を行った場合
因子負荷量行列(回転前) | 回転前の各因子の各変数への因子負荷量の行列 |
---|---|
因子負荷量行列(回転後) | 直交回転後の各因子の各変数への因子負荷量の行列 |
グラフ用データ | グラフ作成用のデータ |
【グラフ】因子負荷量(回転後) | 各変数に対する回転後の因子負荷量を横棒で表したグラフ |
【グラフ】因子1×因子2 | 因子1の回転後の因子負荷量を横軸に、因子2の回転後の因子負荷量を縦軸にとり変数をプロットしたラベル付き散布図。因子が2つ以上ある場合にのみ出力されます。 |
因子得点係数行列※4 | 各因子の得点の各変数へ得点係数の行列 |
因子得点※5 | 各因子の各ケースの回転後の因子得点 |
※4:ダイアログで「因子の推定方法」を[最尤法]とした場合に出力します。
※5:ダイアログで[因子得点を出力する]にチェックを入れた場合に出力します。
斜交回転を行った場合
因子負荷量行列(回転前) | 回転前の各因子の各変数への因子負荷量の行列 |
---|---|
回転後の因子の相関行列 | 斜交回転後の因子間の相関係数の行列 |
因子構造行列 | 斜交回転後の各因子と各変数との相関係数の行列 |
因子パターン行列 | 斜交回転後の各因子の各変数への因子負荷量の行列 |
グラフ用データ | グラフ作成用のデータ |
【グラフ】因子パターン | 各変数に対する因子パターンを横棒で表したグラフ |
【グラフ】因子1×因子2 | 因子1の因子パターンを横軸に、因子2の因子パターンを縦軸にとり変数をプロットしたラベル付き散布図。因子が2つ以上ある場合にのみ出力されます。 |
因子得点係数行列※6 | 各因子の得点の各変数へ得点係数の行列 |
因子得点※7 | 各因子の各ケースの回転後の因子得点 |
※6:ダイアログで「因子の推定方法」を[最尤法]とした場合に出力します。
※7:ダイアログで[因子得点を出力する]にチェックを入れた場合に出力します。



参考文献
- Jennrich, R. I.and Robinson, S. M. "A Newton-Raphson algorithm for maximum likelihood factor analysis", Psychometrika Vol.34 P111-123 1969.
- Joreskog, K. G. "Some contributions to maximum likelihood factor analysis", Psychometrika Vol.32 P443-482, 1967.
- Rao, C. R. "Estimation and Tests of significance in factor analysis", Psychometrika Vol.20 P93-111, 1955.
- 浅野 長一郎, "因子分析法通論", 共立出版,1971.
- 繁桝 算男, 森 敏昭, 柳井 晴夫, "Q&Aで知る統計データ解析―DOs and DON'Ts", サイエンス社, 2008.
- 芝 祐順, "因子分析法 第2版", 東京大学出版会, 1979.
- 松尾 太加志, 中村 知靖, "誰も教えてくれなかった因子分析―数式が絶対に出てこない因子分析入門", 北大路書房, 2002.
- 柳井 晴夫, 高木 広文, "多変量解析ハンドブック", 現代数学社, 1986.
- 柳井 晴夫, 前川 真一, 繁枡 算男, 市川 雅教, "因子分析―その理論と方法", 朝倉書店, 1990.