- Step1. 基礎編
- 28. 等分散性の検定とWelchのt検定
28-1. F分布
F分布は、自由度が、のカイ二乗分布、が互いに独立である場合に、次の式から算出されるFが従う確率分布のことです。このときFは自由度(, )のF分布に従います。F分布はt分布やカイ二乗分布と同様、自由度によって形が異なる分布ですが、t分布やカイ二乗分布と異なり2つの自由度から分布の形が決まります。
自由度がとのとき、F分布の確率密度関数は次の式で表すことができます()。はガンマ関数、はベータ関数を表します。F分布の式は非常に複雑ですが、覚える必要はありません。
あるいは
■F分布の実際の使い方
正規分布に従う2つの母集団が従う確率変数、を考えます。これらの母集団からそれぞれサンプルサイズが, の標本を抽出したときの不偏分散をそれぞれ, とします。このときFを求める式には次の関係が成り立ちます。また、Fは自由度(, )のF分布に従います。
2つの母集団の母分散が等しいと仮定できるとき、上の式は
となることから、Fは帰無仮説を「2標本の母分散は等しい()」とした場合に、2標本の不偏分散を用いて母分散が等しいかどうかを検定する「等分散性の検定」に使われます。等分散性の検定については28-3章で説明します。
■F分布の形
自由度を変化させた時のF分布の形を見てみます。次のグラフは自由度(, )(グラフ中ではdfで表示しています)が(1, 5)、(2, 5)、(3, 5)、(10, 5)、(10, 20)である場合のF分布(黒、赤、緑、青、水色、ピンク線)です。
■F分布の性質
- 期待値と分散
確率変数が自由度(m, n)のF分布に従っている時、の期待値と分散は次のようになります。
- t分布とF分布の関係
標準正規分布N(0, 1)に従うZと自由度nのカイ二乗分布Wがあり、これらが互いに独立であるとき、次の式から算出されるtは自由度nのt分布に従います(20-1章)。
上式の両辺を2乗すると、 となりますが、自由度1のカイ二乗分布は標準正規分布に従う確率変数を2乗したものに等しくなるので(22-1章)、tが自由度のnのt分布に従うとき、は自由度(1, n)のF分布に従います。
■おすすめ書籍
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28. 等分散性の検定とWelchのt検定
事前に読むと理解が深まる- 学習内容が難しかった方に -
- 11. 確率変数と確率分布
11-4. 確率密度と確率密度関数
- 22. 母分散の区間推定
22-1. カイ二乗分布