- Step1. 基礎編
- 28. 等分散性の検定とWelchのt検定
28-3. 母分散の比の信頼区間の求め方
22-3章と22-4章ではカイ二乗分布を使って、母分散の信頼区間を求める方法について学びました。この章では、母分散の"比"の信頼区間の求め方について学びます。
28-1章で学んだように、確率変数が正規分布 と に従う2つの母集団からそれぞれサンプルサイズが 、 の標本を抽出したときの不偏分散をそれぞれ 、 とします。このとき、次の式から算出される統計量Fが自由度(, )のF分布に従うことを利用して母分散の比の信頼区間を算出します。
例題:
ある工場では、生産している部品AとBを1時間毎に1つ抜き取り、その重さを検査しています。計6個の部品Aの重さから算出した不偏分散は 、計11個の部品Bの重さから算出した不偏分散は でした。この結果から母分散の比(b/a)の95%信頼区間を求めてみます。
- 統計量Fを計算する
- 使用するF分布の自由度を決める
- 統計量Fの値がF分布の95%の面積(=確率)の範囲にあればいい(=両端の2.5%の面積の部分の極端な範囲に入らなければいい)ので、F分布表から自由度(5, 10)における上側2.5%点を調べる
- 95%信頼区間を求める
部品AとBの重さの不偏分散をそれぞれ 、、母分散をそれぞれ 、 とすると、次の式から統計量Fを求められます。
サンプルサイズは、部品Aが6、部品Bが11であることから自由度が(6-1, 11-1)=(5, 10)のF分布を用います。
※確率変数が自由度()のF分布に従う時、その逆数である は自由度()のF分布に従います。したがって、自由度()のF分布における上側点の値が のとき、自由度()のF分布における下側点の値は として算出できます。
【F分布表 】
v2↓ v1→ | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 647.789 | 799.500 | 864.163 | 899.583 | 921.848 | 937.111 | 948.217 |
2 | 38.506 | 39.000 | 39.165 | 39.248 | 39.298 | 39.331 | 39.355 |
3 | 17.443 | 16.044 | 15.439 | 15.101 | 14.885 | 14.735 | 14.624 |
4 | 12.218 | 10.649 | 9.979 | 9.605 | 9.364 | 9.197 | 9.074 |
5 | 10.007 | 8.434 | 7.764 | 7.388 | 7.146 | 6.978 | 6.853 |
10 | 6.937 | 5.456 | 4.826 | 4.468 | 4.236 | 4.072 | 3.950 |
15 | 6.200 | 4.765 | 4.153 | 3.804 | 3.576 | 3.415 | 3.293 |
統計数値表から の値を読み取ると「4.236」となっています。また、反対側の値は「」の逆数を取って「」となります。したがって、F分布において上側2.5%点は「」、下側2.5%点は「」であることから、 の範囲は次のように書けます。
3. の式に と の値を代入します。
となるので、 の95%信頼区間を計算すると
となります。
【まとめ】母分散の比の信頼区間
確率変数が正規分布 と に従う2つの母集団からそれぞれサンプルサイズが 、 の標本を抽出したときの不偏分散をそれぞれ、とすると、次の式から母分散の比 の 信頼区間を求めることができる。ただし、「」は自由度が のF分布における上側確率が となる値を、「」は下側確率が となる値を示す。
ただし、この式は次の式と同義である。