一元配置分散分析 : One-way Analysis of Variance
概要
r種類(r ≥ 2)の処理が特性値にもたらす効果に差があるかどうかを検定により調べる分析手法です。特性値は量的データであり、第k番目の処理の効果(主効果)をakとすると、検定する仮説は以下のようになります。
- 帰無仮説H0:a1=a2=…=ar
- 対立仮説H1:a1=a2=…=arではない
一元配置分散分析では、帰無仮説が棄却された場合でもどの処理間に差があるのかはわかりません。どの処理間に差があるかを調べる場合は多重比較検定を利用します。
分散分析では、特性値に影響を与える原因のうち実験で取り上げる原因を「因子」といいます。さらに、その因子を量的または質的に変化させた各処理を「水準」といいます。データ例の場合、因子は「水温」、水準は「5℃」、「10℃」、「15℃」、「20℃」となります。特性値全体の変動は、因子による変動と誤差による変動とに分解されます。
多重比較
多重比較は、複数の水準の中でどの水準間に有意な差があるかを検定する手法です。多重比較にはいくつかの手法がありますが、本製品では次の9手法を利用できます。それぞれの手法の特徴については、「多重比較」をご覧ください。
全ての対比較を行う手法 | 対照群との対比較を行う手法 |
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分析例ファイルのダウンロード
一元配置分散分析を使用する際のデータの形式やダイアログの指定方法、出力結果などを以下のExcelファイルからご確認いただけます。ダウンロードしてご参照ください。この分析例ファイルは、製品をご購入された場合にも自動でインストールされます。
なお、エクセル統計の無料体験版では、分析例ファイルのデータを実際に分析してみることができます。
処理対象データ
表形式
データサイズ範囲 | 処理対象データ | ||||
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行数 | 列数 | 行数×列数 | 数値 | 文字列 | 空白 |
2~30,000行 | 2~250列 | 60,000セル以下 | ○ | 欠 | 欠 |
※:○…処理可、×…処理不可、欠…欠損値として除く
データベース概要
- データが表形式ではなく、1列の水準情報と1列の観測データに整理されている場合は多元配置分散分析を使用すること
出力内容
基本統計量 | 各水準の「サンプルサイズ」、「平均値」、「標準偏差(SD)」、「平均値-SD」、「平均値+SD」、「標準誤差(SE)」、「平均値-SE」、「平均値+SE」 |
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【グラフ】各水準の平均値 | 水準ごとに「平均値+SD」、「平均値+SE」、「平均値」、「平均値-SE」、「平均値-SD」を高低線で結んだグラフが出力されます。高低線の間で重なりが少ないほど水準間に差があることを示します。 |
等分散性の検定 | 帰無仮説:「全ての水準の母分散は等しい」について「バートレット検定」と「ルビーン検定」を行った結果 |
分散分析表 | 全データの偏差平方和を因子Aと誤差の変動に分解した分散分析表が出力されます。因子Aの平均平方が誤差の平均平方に比べて大きくなるほど、要因効果が大きいことを表します。 |
等分散を仮定しない検定 | 等分散性を仮定しない検定として、「Welch」と「Brown-Forsythe」の2つの手法を用いて検定を行った結果 |
多重比較検定 | ダイアログでチェックを入れた多重比較法によって、各水準間の平均値差を検定した結果 |
参考文献
- Lynne Edwards, "Applied Analysis of Variance in Behavioral Science", Chapman and Hall/CRC, 1993.
- Michihiro Yoshida, "Exact probabilities associated with Tukey's and Dunnett's multiple comparisons procedures in imbalanced one-way ANOVA", Journal of the Japanese Society of Computational Statistics 1, pp.111-122, 1988.
- Ramon C. Littell, Rudolf J. Freund, Philip C. Spector, "SAS System for Linear Models, Third Edition", SAS Institute, 1991.
- Shayle R. Searle, "Linear Models for Unbalanced Data", Wiley-Interscience, 2006.
- アラン・グラフェン, ロージー・ヘイルズ, "一般線形モデルによる生物科学のための現代統計学―あなたの実験をどのように解析するか", 共立出版, 2007.
- 安藤 貞一, 朝尾 正, "実験計画法演習", 日本科学技術連盟, 1968.
- 石村 貞夫, "分散分析のはなし", 東京図書, 1992.
- オリヴィエ・ダン, V.A.クラーク, "応用統計学―分散分析と回帰分析", 森北出版, 1975.
- 高橋 行雄, 芳賀 敏郎, 大橋 靖雄, "SASによる実験データの解析", 東京大学出版会, 1989.
- 田中 豊, "パソコン実験計画法入門", 現代数学社, 1985.
- 田中 豊, 垂水 共之, "パソコン統計解析ハンドブック 3 実験計画法編", 共立出版, 1986.
- 田中 豊, 脇本 和昌, 垂水 共之, "パソコン統計解析ハンドブック 5 多変量分散分析・線形モデル編", 共立出版, 1989.
- 永田 靖, 吉田 道弘, "統計的多重比較法の基礎", サイエンティスト社, 1997.
- 広津 千尋, "実験データの解析―分散分析を超えて", 共立出版, 1992.
- 広津 千尋, "分散分析", 教育出版, 1976.
- 森 敏昭, 吉田 寿夫, "心理学のためのデータ解析テクニカルブック", 北大路書房, 1990.
- 山内 光哉, "心理・教育のための分散分析と多重比較―エクセル・SPSS解説付き", サイエンス社, 2008.
- "SAS/STATTM ユーザーズガイド Release 6.03 Edition", SAS出版局, 1992.