- Step1. 基礎編
- 23. 検定の前に
23-6. 両側検定と片側検定
薬Aに含まれるある成分Bについての分析を行います。Bの含有量を調べるため、生産された薬Aの中からランダムに25粒を抜き取り、成分Bの量を測定しました。その結果平均がmg、不偏分散がでした。
この問題では帰無仮説を「薬A中の成分Bの含有量は100mgである」としたときに、3通りの対立仮説が考えられます。
- 薬A中の成分Bの含有量は100mgではない
- 薬A中の成分Bの含有量は100mgより多い
- 薬A中の成分Bの含有量は100mgより少ない
- は成分Bの含有量が100mgかどうかを調べるための検定です。
- は成分Bの含有量が100mgより多いかどうかを調べるための検定です。この場合、成分Bの含有量が100mgより少ないかどうかについては考慮しません。
- は成分Bの含有量が100mgより少ないかどうかを調べるための検定です。この場合、成分Bの含有量が100mgより多いかどうかについては考慮しません。
1のような検定方法を「両側検定」、2と3のような検定方法を「片側検定」といいます。有意水準を5%とした場合、両側検定と片側検定の有意水準を図示すると以下のようになります。
■両側検定(対立仮説:薬A中の成分Bの含有量は100mgではない)
■片側検定の図(対立仮説:薬A中の成分Bの含有量は100mgより多い)
■片側検定の図(対立仮説:薬A中の成分Bの含有量は100mgより少ない)
両側検定では棄却域が分布の両端にあります。つまり、成分Bの含有量が100mgよりも極端に大きくなった時と小さくなったときに帰無仮説は棄却されます。一方、片側検定では棄却域が分布の片方にしかありません。つまり、成分Bの含有量が100mgよりも極端に多い(もしくは少ない)場合にだけ帰無仮説は棄却されます。逆に成分Bの含有量が100mよりどれだけ少なく(もしくは多く)なっても、帰無仮説は棄却されません。
【コラム】両側検定か片側検定か
両側検定と片側検定では、両側検定のほうが厳しい条件である(右側(または左側)の棄却域が片側検定に比べて狭い)ため、片側検定のほうが棄却されやすくなります。例えば有意水準を5%(P<0.05の場合に有意とする)とした場合、次のようになります。(発生確率=5%の場合の考え方についてはこちらをご覧ください)
事象の発生確率 | 両側検定 | 片側検定 |
---|---|---|
1% | 棄却される | 棄却される |
2% | 棄却される | 棄却される |
3% | 棄却されない | 棄却される |
4% | 棄却されない | 棄却される |
5% | 棄却されない | 棄却されない |
6% | 棄却されない | 棄却されない |
︙ | ︙ | ︙ |
両側検定にするか片側検定にするかは、実験の目的に合わせて検定を行う前に決めておかなくてはなりません。両側検定をやってみて帰無仮説が棄却されないからといって、当初の実験計画から外れて片側検定をやる、というのは誤りです。科学的な実験に対して恣意的な要素が入っていると判断されてしまう恐れがあるからです。