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  • Step1. 基礎編
  • 31. 実験計画

31-5. 検出力の計算

■例題1:

母分散が\sigma^2=10 の正規分布に従う母集団から標本を抽出し、帰無仮説 H_0:\mu=10、対立仮説 H_1:\mu=12 という条件で片側検定を行います。有意水準を5%とするとき、抽出したサンプルサイズが n=10,\ 20, \ 50 の場合の検出力はそれぞれいくらになるでしょうか。



まず、帰無仮説 H_0 が正しいと仮定した場合の棄却点を求めます。

 \displaystyle \frac{\bar{x}-\mu}{\sqrt{\frac{\sigma^2}{n}}} = \frac{\bar{x}-10}{\sqrt{\frac{10}{n}}} = Z_{0.05} = 1.645
 \displaystyle \bar{x} = 1.645 \times \sqrt{\frac{10}{n}} + 10

となることから、n=10 の場合は \bar{x}=11.64n=20 の場合は \bar{x}=11.16n=50 の場合は \bar{x}=10.73 となります。

次に、対立仮説 H_1 が正しいと仮定した場合に、この棄却点以上の値を取る確率(=検出力)を求めます。標準正規分布に従う確率変数を X とします。n=10 の場合、

 \displaystyle P\left(X \geq \frac{\bar{x}-\mu}{\sqrt{\frac{\sigma^2}{n}}}\right) = P\left(X \geq \frac{11.64-12}{\sqrt{\frac{10}{10}}}\right) = P(X \geq -0.36)
 = 1 - P(X \leq -0.36) = 1 - P(X \geq 0.36) = 1 - 0.359 = 0.641

n=20 の場合、

 \displaystyle  P\left(X \geq \frac{11.16-12}{\sqrt{\frac{10}{20}}}\right) = P(X \geq -1.19) = 0.883

n=50 の場合、

 \displaystyle  P\left(X \geq \frac{10.73-12}{\sqrt{\frac{10}{50}}}\right) = P(X \geq -2.84) = 0.998

となります。すなわち、検出力はそれぞれ n=10 の場合は 64.1\%n=20 の場合は 88.3\%n=50 の場合は 99.8\% となります。

このように、サンプルサイズが大きくなるほど検出力は向上します。したがって、実験計画においてはじめに検出力を設定することで、必要なサンプルサイズを計算することができます。

■例題2:

母分散が\sigma^2=10 の正規分布に従う母集団から標本を抽出し、帰無仮説 H_0:\mu=10、対立仮説 H_1:\mu=12H_1:\mu=13H_1:\mu=14 という条件で片側検定を行います。有意水準を5%とするとき、抽出したサンプルサイズが n=10 の場合の検出力はそれぞれいくらになるでしょうか。

■例題3:

母分散が\sigma^2=10 の正規分布に従う母集団から標本を抽出し、帰無仮説 H_0:\mu=10、対立仮説 H_1:\mu=12 という条件で片側検定を行います。有意水準を10%、5%、1%とするとき、抽出したサンプルサイズが n=10 の場合の検出力はそれぞれいくらになるでしょうか。


例題1、2、3の結果をまとめたものが次の表になります。

変化させた条件検出力
例題1:サンプルサイズn=1064.1\%n=2088.3\%n=5099.8\%
例題2:平均値の差\Delta=264.1\%\Delta=391.3\%\Delta=499.1\%
例題3:有意水準\alpha=10\%76.4\%\alpha=5\%64.1\%\alpha=1\%37.7\%

サンプルサイズが大きいほど、効果量が大きいほど、有意水準が大きいほど検出力が向上します。

31. 実験計画


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