- Step1. 基礎編
- 16. 標本と抽出法
16-3. 標本の抽出方法
単純無作為抽出法は標本調査の最も基本的な方法ですが、母集団から完全に無作為に調査対象を取り出すのは、非常に手間と時間がかかる場合があります。そこで、母集団の特徴を反映させつつより手間を軽減させた様々な無作為抽出法があります。
■層化抽出法(層別抽出法)
母集団をあらかじめいくつかの層(グループ)に分けておき、各層の中から必要な数の調査対象を無作為に抽出する方法
【例】男女比が7:3の高校で、10人の学生を対象に意識調査を行う場合、男子の中から7名を、女子の中から3名をそれぞれに無作為に抽出する(このように、層の大きさに比例させて調査対象を抽出する方法を層化抽出法の中でも特に「比例配分法」といいます)
【メリット】母集団内情報(年齢別、性別など)の比較を行える、推定精度が高くなる、各層において分布が大きく異なる場合に使うことができる
【デメリット】母集団の構成情報を事前に知っておく必要がある
■クラスター抽出法(集落抽出法)
次の1~3によって調査対象を抽出する方法
- 母集団を、小集団である「クラスター(集落)」に分ける
- 分けられたクラスターの中から、いくつかのクラスターを無作為抽出する
- それぞれのクラスターにおいて全数調査を行う
【例】高校生の平均身長を調査する際に、高校を1つのクラスターと考え、全国の高校の中からランダムに10校を選び、その10校に通う高校生全員の身長を測定する
【メリット】クラスターの情報(例えば高校名など)さえあれば抽出することができるので、時間や手間を節約できる
【デメリット】同じクラスターに属する調査対象は似た性質を持ちやすいため、標本に偏りが生じる可能性がある(例えば、高校を10校選ぶときに女子校が選ばれた場合、標本から推測される平均身長が低くなってしまう可能性がある)
■多段抽出法
母集団をいくつかのグループに分け、そこから無作為抽出でいくつかグループを選び、さらにその中から無作為抽出でいくつかのグループを選び・・・という操作を繰り返して、最終的に選ばれたグループの中から調査対象を無作為抽出する方法
【例】
- 第1段:全国から30市区町村を無作為抽出
- 第2段:抽出された30市区町村の中からそれぞれ5地区を無作為抽出
- 第3段:抽出された5地区の中からそれぞれ20人を無作為抽出
【メリット】コストを低く抑えられる、抽出効率が高い
【デメリット】サンプルサイズが小さい場合、標本に偏りが生じる可能性がある
■系統抽出法
通し番号をつけた名簿を作成し、1番目の調査対象を無作為に選び、2番目以降の調査対象を一定の間隔で抽出する方法
【例】4,000人から1,000人を選ぶときに、はじめに4,000人に通し番号を付け、ランダムに選ばれた番号から3人おきに(3番おきに)人を抽出していく
【メリット】単純無作為抽出より手間や時間やコストが掛からない
【デメリット】名簿の並び順に何らかの周期があると標本に偏りが生じる可能性がある
■二相抽出法
層化抽出を行いたいが母集団の情報がない場合、まず母集団から標本を抽出して母集団の情報を取得し(第一相)、その情報をもとに層化抽出を行う方法(第二相)
【例】男女比が分からないある都市の住民100名に対してアンケート調査を行う場合、まず住民の中から10,000人を抽出して男女比を調べ(ここでは男性:女性=6:4であったとする)、男性の中から60名を、女性の中から40名をそれぞれに無作為に抽出する
【メリット】母集団の情報がない場合に、効率よく層化抽出を行える
【デメリット】抽出するサンプルサイズが小さい場合、標本に偏りが生じる可能性がある
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標本調査についてもっと深く勉強したい方向けです。