- Step1. 基礎編
- 32. その他
32-4. 時系列データにおける周期変動
32-3章では時系列データから移動平均を算出する方法について学びました。時系列データの中には様々な変動(要因)が含まれているため、これらの変動を分解することでデータの変化をより詳細に捉えることができるようになります。
時系列データは一般的に「傾向変動」、「循環変動」、「季節変動」、「不規則変動」の4つの変動によって構成されていると考えられています。
変動 | 説明 |
---|---|
傾向変動 T (Trend variation) | 長期にわたる持続的な変化 |
循環変動 C (Cyclical variation) | 周期は一定ではないが3~15年くらいで周期的に繰り返される変化 |
季節変動 S (Seasonal variation) | 12ヶ月間(1年)で繰り返される変化 |
不規則変動 I (Irregular variation) | 観測誤差など諸要因による変化 |
■時系列モデル
これらの4つの変動を使って観測値を表すためのモデルを作ることができます。代表的なモデルに「乗法モデル」と「加法モデル」があります。
- 乗法モデル:観測値=T×C×S×I(変動の積からなるモデル)
- 加法モデル:観測値=T+C+S+I(変動の和からなるモデル)
■各変動の抽出の流れ(乗法モデルの場合)
- 期別平均法を用いて季節変動(S)を算出する。期別平均とは月別データや四半期データから算出した期毎の平均値のこと。
- 季節変動(S)を用いて観測値/S=TCSI/S=TCIを抽出する。このように観測値から季節変動の影響を取り除くことを「季節調整」という。また、TCIを季節調整値という。
- 季節調整値(TCI)に対して移動平均法を用いてトレンド(TC)を抽出する。指数平滑法が用いられる場合もある。
- トレンド(TC)を用いてTCI/TC=不規則変動(I)を抽出する。
このようにして観測値から抽出されたトレンド(TC)を見ることで、データの傾向を捉えたり将来の予測を行うことができます。
■乗法モデルを用いた時系列データ分析例
次のデータは2000年以降四半期ベースの医薬品・化粧品卸売販売額のデータです。このデータに対してEPA法(乗法モデル)により時系列分析を行ってみます。EPA法は時系列データに対して季節調整を行う手法の1つで、エクセル統計にも搭載されています。
年 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1Q | 4,867 | 4,779 | 4,845 | 5,041 | 5,149 | 5,400 | 5,503 | 5,781 | 5,989 | 5,772 |
2Q | 5,377 | 5,425 | 5,333 | 5,434 | 5,688 | 5,822 | 6,128 | 6,309 | 6,548 | 6,133 |
3Q | 5,234 | 5,307 | 5,286 | 5,419 | 5,625 | 5,671 | 6,030 | 6,187 | 6,447 | 6,218 |
3Q | 5,769 | 5,836 | 5,905 | 6,015 | 6,055 | 6,390 | 6,663 | 6,873 | 6,740 | 6,680 |
※経済産業省 商業動態統計調査「医薬品・化粧品卸売販売額」より(単位:10億円)
次に示すのは、観測値(TCSI)とEPA法により得られた季節調整値(TCI)、トレンド(TC)、季節変動(S)、不規則変動(I)のグラフです。
観測値(TCSI)のグラフを見ると、1年の周期性を持った季節変動(S)を含んでいることが分かります。したがって季節調整値(TCI)を見ることで、季節変動を除いた観測値の傾向を確認することができます。TCIとTCのグラフはほぼ一致しているので、突発的な影響による不規則変動(I)は少ないと言えます。
トレンド(TC)を見ると、販売額の推移は最初は横ばい気味で2008年にピークを迎えて、2009年にはやや下降していることが読み取れます。