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平均人―統計学史(1)

2017/08/13

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平均の概念を人間にあてはめたのはベルギーの数学者で天文学者であったアドルフ・ケトレー(Lambert Adolphe Jacques Quetelet、1796-1874)です。ケトレーは近代統計学の祖と云われています。ケトレーは数々の業績を残していますが、肥満度の指標として使われているBMI(Body Mass Index、体重を身長の2乗で割った値)も彼が考案したものです。

19世紀になると近代化が進み、数々の統計資料が出回るようになります。そんな中、ケトレーは、「エジンバラ・メディカル・ジャーナル」に掲載されたスコットランド兵士5738人の胸囲を集計して、胸囲が40インチ弱の値を中心とした正規分布を描くことに気づきました。

それまで、正規分布は、天体観測における観測誤差の分布として応用されていましたが、ケトレーは、人間の身体的データだけでなく、出生、結婚、死亡、犯罪などの発生率という社会的データについても平均値を測定し、正規分布をあてはめることに熱中します。

ケトレーは、自著「人間について」の中で、人間社会における標準としての「平均人(l'homme moyen)」という概念を提出しました。ケトレーにしてみれば、個人の自由な振る舞いさえも、平均人を中心とした正規分布の範囲内のばらつきの一つに過ぎません。

ケトレーによって、統計学は人間社会を記述し、分析するための有効なツールとなりました。クリミアの天使と言われた、ナイチンゲール(Florence Nightingale、1820-1910)も、そんなケトレーの影響を受けた人物の一人です。

ナイチンゲールは、クリミア戦争が起こると黒海のトルコ側、スクタリの英国陸軍病院に赴きました。病院では、戦死した兵士の多くが戦場で受けた傷ではなく、病院内でコレラ、やチフス、赤痢に感染し死亡していました。病院内は、ひどく不衛生な状況でしたが、ナイチンゲールの働きにより、まもなく状態は改善され、病院での死亡率は最悪時の42%から2%にまで下がります。

ナイチンゲールは、帰国後、"Notes on Matters Affecting the Health, Efficiency and Hospital Administration of the British Army"という1000ページにも及ぶ覚え書きを残しています。ここには、彼女が収集した軍の衛生管理に関する様々な統計データと彼女の考察が記されています。この中にある1枚のグラフ(Polar-Area Diagram)は、陸軍病院での死因が戦闘ではなく、病気であったことを鋭く物語っています。

ナイチンゲールは英国人の健康のため、統計学で理論武装して改革に臨みました。彼女の考案したグラフの有効性が評価され、後に英国統計学会の会員になり、米国統計学会の名誉会員にもなっています。イギリスでは、ナイチンゲールを統計学の先駆者として位置づけています。



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